運動時の水分補給に欠かせないスポーツドリンク。皆さんは何を飲んでいますか?市販のスポーツドリンクは手軽にどこででも買えますが、実は2種類あるのをご存知ですか?糖分、塩分がちょっと心配という方は、スポーツドリンクを自分で作ることもできますよ。中高年にも優しいスポーツドリンクレシピもご紹介します!
スポーツドリンクと水では何が違うの?
長時間坂道を登ったり下ったりする登山では、四季を問わず大量の汗をかきます。特に夏の炎天下では熱中症も心配です。そのため、こまめな水分補給が必要になってきますが、水分なら何でもいいやと、水だけを飲んでいるのはよくありません。
なぜなら、体内の水分補給は水だけでは補えないからです。
ヒトの体液は、水分と電解質(ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)で出来ています。汗をかいたからと言って水ばかり飲み続けると体液濃度が薄くなり、体は濃度を元に戻そうと水分を尿として出してしまいます。結果、体液量は回復できないのです。
また、水をがぶ飲みすることはないとは思いますが、多飲による「水中毒」※1を引き起こすこともあります。
※1水中毒(みずちゅうどく、water intoxication)とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状であり、具体的には低ナトリウム血症や痙攣を生じ、重症では死亡に至る。人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は、毎分16mLであるため、これを超える速度で水分を摂取すると、体内の水分過剰で細胞が膨化し、希釈性低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そこでスポーツドリンクの摂取が大切になってきます。
スポーツドリンクは「スポーツ飲料(清涼飲料水)」とも呼ばれ、体液に近い浸透圧で作られているので体内への吸収率がよく、汗で体外に出てしまう水分と電解質を効率よく補給できる飲み物です。
また、スポーツで失われがちなマグネシウム、カルシウムなどのミネラルも同時に補給できます。
軽度の運動なら水や麦茶でもいいのですが、炎天下のスポーツや長時間の登山には脱水症状の回復や熱中症予防に効果的なスポーツドリンクを飲むようにしましょう!
スポーツドリンクの成分はなに?
スポーツドリンクの基本成分は、水、糖質、塩分です。これ以外にメーカーによってミネラル、アミノ酸、ビタミン類などが添加されたりしています。
糖質は、塩分と一緒に摂取することで小腸での水分の吸収率を高める働きがあります。また疲労回復の際の最も有効なエネルギー源となります。
塩分は、スポーツでの発汗で体外に出てしまうナトリウムを補うために必要です。
この糖質と塩分のバランスが大事で、薄すぎても濃すぎても吸収率は悪くなります。
糖質は4~8%、塩分は0.1~0.2%の濃度が、水分吸収効率が最も良いとされています。
スポーツドリンクの種類について

皆さんはスポーツドリンクに種類があるのをご存知ですか?
それは「アイソトニック飲料」と「ハイポトニック飲料」です。ラベルに大きく書いてあるわけではないので気にせず購入しがちですが、それぞれに役割がありますので、覚えておくと状況に応じた使い分けができますよ。
また、最近では「経口補水液」というものも目にするようになりました。メーカーごとにコンセプトは違いますが、おもに下痢や嘔吐を伴う脱水症状に適した飲料水となっています。成分的には「ハイポトニック飲料」の部類に入ります。
これらの特長を以下で詳しくご説明します。
アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の違いとは?

アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の違いは「浸透圧」です。
「浸透圧」とは、濃度が違う2つの水が半透膜(細胞膜)を隔てて隣り合わせのときに、濃度を一定に保とうとして水分が移動する力のことです。水分は濃度の薄いほうから濃いほうへ移動します。
●アイソトニック飲料はヒトの安静時の体液と同じ濃度の飲料で、「等張液」とも言います。
糖質が4~8%含まれていて、安静時においては水分・糖分・塩分がバランスよく吸収されます。糖質が多いので長時間の運動でエネルギー補給をしたい時におすすめです。
しかし、運動中の大量発汗で塩分が少なくなり体液が薄くなっている時は、浸透圧の原理で水分の吸収が悪くなるので、できれば運動前や運動後に飲むといいでしょう。
ポカリやアクエリアスなどは、アイソトニック飲料の部類に入ります。
●ハイポトニック飲料はヒトの安静時の体液よりも低い濃度の飲料で、「低張液」とも言います。
糖質が約2%と低めなので、大量発汗で体液が薄くなっている運動中に飲むと、水分が速やかに腸管に吸収されるのが特長です。
ヴァームウォーターやアミノバイタルウォーターなどは、ハイポトニック飲料の部類に入ります。アミノ酸、クエン酸、ビタミンなどが添加されているものもあります。
アイソトニック飲料とは
- ヒトの安静時の体液と同等に作られている
- 糖質が高めなので、長時間の運動でエネルギーを欲する時に飲むと良い
- 運動前・運動後の水分補給に適している
ハイポトニック飲料とは
- ヒトの体液より薄めに作られている
- 発汗の多い運動中に、速く水分補給したい場合に適している
- 糖質が低めなので、糖質制限・ダイエットをしている人にも適している
経口補水液について

最近ドラッグストアでも手軽に購入できるようになった「経口補水液」は、1940年代より発展途上国のコレラによる脱水症の治療法「経口補水療法(ORT)」にも用いられているものです。
最近では地球温暖化現象による高温化で、代謝が活発な幼児、乳児や、体内の水分が少ないお年寄りが脱水症になるケースが増えており、経口補水液はそういった軽度~中等度の脱水状態の人の水分補給に最適です。
スポーツドリンクとの違いは、「経口補水液OS-1」のサイトによれば、
経口補水液オーエスワンは、経口補水療法の考え方に基づき、脱水状態において不足している電解質(ナトリウムなどの塩分)を補うために、一般的なスポーツドリンクよりも電解質濃度が高く、また水と電解質の吸収を速めるために、スポーツドリンクと比べて糖濃度は低い組成となっています。
大塚製薬OS-1
とあります。
通常のスポーツドリンクの食塩相当量が100mlあたり約0.1gであるのに対し、経口補水液では約0.3gと3倍の量が入っているため、塩分補給に効果的な反面、高血圧の人や食事療法を行っている人の大量摂取には注意が必要です。
盛夏の登山などで脱水症の心配がある場合には、お守り代わりとして1本持っていると安心ですね。
経口補水液とは
- おもに軽度~中等度の脱水状態時の水・電解質を補給、維持するのに適している
- 高齢者の経口摂取不足、腸炎、下痢、嘔吐、発熱を伴う脱水状態に適している
- 水分の吸収をよくするため、塩分は多めに、糖分は少なめになっている
- 価格が高めである
市販スポーツドリンク比較
実際に、アイソトニック飲料、ハイポトニック飲料、経口補水液の成分を見比べてみました。商品によって多少の違いはありますが、ここではポカリスエット、ヴァームウォーター、OS-1を例にとってみます。
アイソトニック飲料 (ポカリスエット) | ハイポトニック飲料 (ヴァームウォーター) | 経口補水液 (OS-1) | |
---|---|---|---|
エネルギー | 25kcal | 0kcal | 10kcal |
たんぱく質 | 0g | 0.3g | 0g |
脂質 | 0g | 0g | 0g |
炭水化物(糖質) | 6.2g | 0.74g | 2.5g |
食塩相当量 | 0.12g | 0.1g | 0.292g |
カリウム | 20mg | 12mg | 78mg |
カルシウム | 2mg | 4.6mg | ー |
マグネシウム | 0.6mg | 1.2mg | 2.4mg |
リン | ー | ー | 6.2mg |
アミノ酸 | ー | 300mg | ー |
表を見ると、アイソトニック飲料は糖分とエネルギー値が高くなっているのがわかりますね。確かにポカリなどは飲み口が甘く感じられます。
ハイポトニック飲料は糖分、食塩相当量ともに低く、ミネラルやアミノ酸が多いのがわかります。エネルギーもほぼなく、味は薄口であっさりしています。
経口補水液は、食塩相当量が多く、糖質はそれほど多くありません。味はあまりおいしくありません。カリウムやリンなどが多めなのは、嘔吐、下痢などで失われるミネラルを補給する目的によるものです。
糖分を気にする方はアイソトニック飲料を薄めて飲むのも「あり」ですが、そうすると塩分まで薄まってしまいます。水分補給の本来の目的を考えたら、最初から糖分の少ないハイポトニック飲料を選んだほうがいいでしょう。
▼その他のおもなアイソトニック飲料
- アクエリアス(コカ・コーラ)
- グリーンDA・KA・RA(サントリー)※冷凍可
- イオンウォーター(コカ・コーラ)
- ビタミンウォーター(サントリー)
▼その他のおもなハイポトニック飲料
- スーパーH2O(アサヒ)
- アクエリアスゼロ(コカ・コーラ)
- アミノバリュー(大塚製薬)
- 「アミノバイタル®電解質チャージ」ウォーター(粉末タイプ)(味の素)
- ハイポトニックSPORTS DRINKパウダー(ジャパン栄養)
▼その他のおもな経口補水液
- アクエリアス経口補水液(コカ・コーラ)
- 経口補水S-OS(五州薬品)
- エブリサポート経口補水液(日本製剤)
- 経口補水液アクアソリタ(味の素)

自分の体質に合ったスポーツドリンクを作ってみよう

スポーツドリンクは自分でも簡単に作ることが出来ますよ。頻繁に登山をする方は、経済的な面を考えると自分で作ったほうが安上がりになりますね。
体質に合わせて材料をアレンジすることもできますので、高血圧や糖尿病などの持病がある人は試してみてはいかがでしょうか。
▼スポーツドリンクの基本レシピ
材料(1L分)
- 水 1L
- 砂糖 40g~80g(大4~大9)
- 塩 1g~3g(小1/6~小1/2)
- レモン汁 50ml
砂糖 大1=9g 塩 小1=5g
作り方
- ペットボトルやナルゲンなどの容器を用意します
- 別容器(計量カップやボウル)に少量の水とその他の材料を入れて溶かします
- 2を容器に入れて、残りの水をそそぎ、フタをして撹拌すれば完成
※ 2は、ペットボトルなどの口径が狭い容器、蓋のないピッチャーの場合に行う。
500mlで作る場合は材料を半分にしてください。水は市販のペットボトル水、浄水、水道水のどれでも作れます。砂糖、塩、レモン汁の分量は、範囲内で増減していただいて構いません。自分好みのオリジナルドリンクも作れますね!
レモン汁に含まれるビタミンC(クエン酸)は、疲労回復や水分の吸収を促進させる効果があります。また、カリウムも含まれており、足のつり防止効果もあります。市販のレモン果汁、生レモン、またはシークァーサー果汁、リンゴ果汁などでも大丈夫です。
- 日持ちがしないので1~2日で飲みきるようにしましょう。
- ステンレス製の水筒でも作れますが、スポーツドリンクに含まれている塩分がステンレスを腐食させる可能性がありますので、使用後はすぐにブラシを使い中性洗剤でよく洗って乾燥させてください。
容器ですが、私はナルゲンボトルに入れています。ナルゲンボトルはスポーツドリンクのにおいが付きにくく、洗うのも楽です。500mlと1Lではどちらも小さ過ぎ大き過ぎなので、私はOTFボトル650mlがちょうどいい大きさです。
砂糖をブドウ糖に変えてカロリーダウン

甘いのが苦手な方やカロリーが気になる方は、砂糖をブドウ糖に変えるのもおすすめです。
ヒトのエネルギー源に必要な栄養素はブドウ糖です。砂糖はショ糖なので、単糖に分解されるまでに10分~1時間かかりますが、ブドウ糖は単糖類なのでそれ以上分解されず、数分で体内に吸収されます。
また、ブドウ糖は砂糖よりカロリーが低い(砂糖の75%)ので、砂糖をブドウ糖に置き換えることで甘味が抑えられ、カロリーダウンにもなります。
分量としては、砂糖と同量でお試しください。
ブドウ糖はドラッグストアでは固形のものしか置いていませんが、インターネット通販では粉末を購入することができます。
砂糖をハチミツに変えてカロリーダウン

ハチミツは単糖類である「果糖」と「ブドウ糖」で出来ていて、体内で即エネルギーになるため運動時のエネルギー補給に最適です。
甘味については、砂糖大さじ1とハチミツ小さじ1が同じ甘さであり、カロリーは砂糖より20%ほど控えめです。成分には、糖質の他ビタミン、ミネラルも含まれているので、スポーツドリンクの材料としておすすめです。また、ポリフェノールの一種であるフラボノイドも含まれているので、抗酸化作用、老化防止効果が期待できます。
デメリットとしては、ハチミツは結晶化しやすいので早めに使い切るか、固まった場合は湯煎してご使用ください。また、夏場でも常温保存してください。
分量としては、砂糖の1/3でお試しください。
※ハチミツは乳児ボツリヌス症にかかる恐れがありますので、1歳未満の乳児には与えないでください。
塩を選んでミネラル成分UP
塩にもいくつか種類があります。パッケージの裏面に記載されている栄養表示成分にマグネシウム、カリウム、カルシウムなどが含まれているものを選ぶと、ミネラル成分がUPされておすすめですよ。ミネラルが入っている分、食塩相当量が減り減塩にもなります。
▼栄養成分(100gあたり) <参考>食塩(塩事業センター):食塩相当量99.0g
瀬戸のほんじお:カリウム880mg、マグネシウム300mg、カルシウム160mg、食塩相当量88.9g
赤穂の天塩:マグネシウム550mg、カルシウム5~70mg、カリウム5~80mg、食塩相当量92.0g
伯方の塩:マグネシウム:100~200mg、カルシウム50~200mg、カリウム10~150mg、食塩相当量95.5g
砂糖を使わない私のお気に入りレシピをご紹介します!抵抗なく飲める味です。分量は500ml分です。
- 水 500ml
- ブドウ糖 大さじ3 または ハチミツ 大さじ1
- 塩 ひとつまみ(親指と人差し指でつまんだ量)
- レモン汁 大さじ2/3(多過ぎても酸っぱくなるのでこれくらい)
水分補給のタイミング
運動時の水分補給には、適したタイミングや量があります。タイミングを間違えると、身体パフォーマンスが落ちたり、運動の負担になったりします。以下を参考にしてください。
- 運動の30分前までに250~500mlを飲んでおきましょう。直前は胃が重くなるのでやめましょう。
- 運動中はこまめに補給しましょう。一度にたくさん飲むと、余った分が吸収されず尿となって外に出てしまいます。
- 喉が渇く前に補給しましょう。渇いたと感じた時には既に脱水が始まっています。
必要な水分量は人によって違います。季節や運動量でも変わりますので、適宜調整して下さい。
まとめ
スポーツドリンクには浸透圧の違いによってアイソトニック、ハイポトニックの2種類があるということが分かりました。
- アイソトニック飲料は長時間の運動でエネルギーを欲する時、運動前・運動後の水分補給に適している
- ハイポトニック飲料は、発汗の多い運動中、速く水分補給したい場合に適している
それぞれ体液の濃さに合わせた処方になっているので、知っていると水分を効率的に補給できますね!
また、自家製のスポーツドリンクも手軽にできますので、自分好みの味に出会えると運動のモチベーションも上がりそうです。高血圧、血糖値が高めの方は是非作ってみてください。
暑い季節の登山は、熱中症の危険と常に隣り合わせです。適切なタイミングに、適切な飲み物を飲むことでエネルギーの消耗を抑えることが出来ます。厳密な必要量は個人の体格で変わってきますので、自分の適量を日頃から把握し、暑い夏を乗り切りましょう!
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