秋冬のウェアを買ったけど、どうレイヤリングすればいいのか分からない方、もっと上手にレイヤリングを楽しみたい方、そもそもレイヤリングの意味が分からない方のために、登山女子管理人が気温別に組み合わせたおススメのコーディネイトをご紹介します。
レイヤリングの基本をおさらいしよう

登山ウェアの基本はレイヤリング(重ね着)ですね。街歩きのように、下は綿Tシャツ1枚、上はもこもこダウンでOK!というわけにはいきません。それはなぜでしょうか?今一度おさらいしておきましょう。
■なぜレイヤリングが必要なのか?
山岳遭難の原因のひとつに、適切なウェア選びをしていなかったり、防寒着を持っていなかったことによる低体温症が挙げられます。低体温症とは、深部体温が35℃を下回ることにより、臓器が正常に働かなくなり、意識混濁や不整脈が起こることで、最悪死に至ることもある危険な状態を言います。
登山では、運動中の発汗による汗の処理がうまくできないことで起こります。特に冬は外気温が低いため、停滞時に自分がかいた汗で汗冷えが起こり、低体温症を招くことがあります。さらに雨や雪で身体が濡れると体温の低下は加速します。山を甘く見ていると、最悪命の危険すらあるのです。
そうならないために、いかに汗をかかずに快適に活動するか?いかに汗を外に上手に逃がすか?いかに衣類で保温力をあげるか?が重要になってきます。
■レイヤリングの基本は?
基本的にはベースレイヤー(内側)、ミドルレイヤー(中間)、アウター(外側) の3層です。
状況によってはインサレーション(中綿入り保温着)を加えた4層となります。素材は汗抜けがしやすい綿以外の化繊(ポリエステル、ナイロン等)やウールを選びましょう。
レイヤーごとの秋冬ウェアの紹介については、こちらの記事も参考にしてください↓
気温に応じた秋冬レイヤリング例

山登りで着ていくウェアを決める時は、まず行く山の山麓と山頂の気温を調べますよね。でも、何℃くらいでどんな服を着たらいいのか、すごく悩まれるのではないでしょうか?
平地と山の気温は違いますから、想像することもなかなか難しいものです。一般的に標高が100m上がると、気温は0.6℃下がると言われています。標高1000mの山頂だと、平地より6℃は低くなる計算です。2000mだと12℃低くなるのです。

11月初旬に行った標高2000mの大菩薩嶺の朝の気温は1℃でした。平地は13℃でした。計算合ってますね。
あとは風速も大事です。風が強いと体感温度は下がります。だいたい風速1m増すごとに1℃下がると言われています。寒さは気温だけでは分からないのも事実なのです。私はだいたい風速4m以上になったら、より防風性の高いウェアで風対策をします。
私もこれまでにずいぶんと悩み、失敗を繰り返し、少しずつ学習してきました。寒いと思って厚着をして行ったら予想以上に暑かったとか、行ってみたら雪が降っていてもう1枚必要だったとか。私も未だ完ぺきではないのですが、少しでもお役に立てればと思い、手持ちのウェアで気温別のレイヤリングを考えてみました。
ちなみに、山の天気を知りたい方は、「てんきとくらす・行楽地の天気予報」で調べることができますよ。その中の「高原・山」をクリックしてエリアを選択してください。
気温15℃前後のレイヤリング
平地ではまだまだ暑い日があっても、山の上はもう涼しい風が吹いているそんな季節です。とは言え、歩き始めれば汗がだらだら出てきてしまうでしょう。ベースは吸湿速乾性のあるポリエステル素材のウェア、ミドルは同じくポリエステルのTシャツを持ってきます。アウターは風の強い時や休憩時にウィンドブレーカーがあると便利です。
そういう季節に私は…

- ベースレイヤー・・・ドライレイヤーベーシックフィットブラ(finetrack)+キャプリーンクールライトウェイト長袖(patagonia)
- ミドルレイヤー・・・ポリエステル素材の半袖Tシャツ
- アウターレイヤー・・・フーディニ(patagonia)
を着ていきます。
finetrackのドライレイヤーシリーズは鉄板商品なので持っていると便利です。パタゴニアのキャプリーンクールライトは、湿気を外に発散してくれて、サラッとした着心地。半袖Tシャツはどこのメーカーでも構いませんが、ポリエステル100%がおススメです。アウターのフーディニは、冷たい風を防ぎ、ある程度の保温もしてくれます。暑くなれば脱いで体温を調整します。

小物は、日光を遮る夏用のハット、指無しグローブ、手ぬぐいでまだ十分かと思います。汗対策をしっかりしましょう。
気温10℃前後のレイヤリング
自分的には、快適に登山をしやすい気温が10℃前後なんですね。ダラダラと汗をかくほど暑くもなく、それほど寒くもない。でも、そろそろ首回りは保温したい気温。ベースは吸湿速乾性のポリエステルTシャツでしっかり吸湿し、長袖のジップアップTシャツなどを着ていきます。ミドルには半袖Tシャツを重ねます。アウターは保温性と通気性のあるソフトシェルがちょうどいいでしょう。
そういう季節に私は…

- ベースレイヤー・・・ドライレイヤーベーシック ブラ+T(finetrack)+キャスター ウール ジップ ロングスリーブ(ミレー)
- ミドルレイヤー・・・ HUGO プランニングTシャツ ショートスリーブ(ミレー)
- アウターレイヤー・・・アルティメット VI SO フーディッドジャケット(マムート)
を着ていきます。
ミレーのキャスターウールジップはベースの位置付けですが、ウールとポリエステル混なので、保温と速乾を両立してくれて温かく、私はミドル兼用で着たりします。マムートのアルティメットジャケットは4ストレッチ素材でソフトな着心地。耐風性もあり、汗抜け用のジッパーも付いているので快適に過ごしています。

休憩時の風対策に、ウィンドブレーカーがあると便利です。
気温5℃前後のレイヤリング
秋から冬に向かう季節。晴れと曇りの寒暖差があったりしますので、しっかりと防寒対策をしていきましょう。ベースには薄手ながら保温性のあるメリノウール素材のウェア、ミドルには薄手のフリースや秋冬用シャツなどがおススメです。アウターは、寒さや風などから身を守る耐風耐久性のあるレインウェアなどのハードシェルが必要になってきます。
そういう季節に私は…

- ベースレイヤー・・・ドライレイヤーベーシック ブラ(finetrack)+スーパーメリノウールL.W.ラウンドネックシャツ(モンベル)
- ミドルレイヤー・・・デルタLTフリースジャケット(アークテリクス)
- アウターレイヤー・・・ティフォン50000ストレッチジャケット(ミレー)
を着ていきます。
モンベルのスーパーメリノウールは冬登山ではいつも着ていますね。L.W.は薄手ですが、保温性があって安心です。寒がりさんは、M.W.(中厚手)もおススメです。アークテリクスのLTフリースは、保温性を保ちながらも薄いので、行動中も着ていられますし、もたつかないので気に入っています。ミレーのティフォン50000ストレッチジャケットは、今シーズン一番買ってよかったと思えるウェアです。防風透湿性があるので下りの行動中もずっと快適でいられますし、軽くてゴワゴワせず、コンパクトになるのもポイントが高いです。
気温0℃前後のレイヤリング
気温0℃前後と言うと、霜が降りていたり雪が舞ったりする真冬の装いになります。強風で耳や指先が冷たくなり凍傷を発症する危険もありますので、小物類も徹底した防寒対策が必要になってきます。ベースはこれまで通り保温性の高いメリノウール素材がおススメです。ミドルには中厚のフリース、または薄手のシャツを2枚、極寒が予想される場合は中綿入りインサレーションも視野に入れましょう。アウターはレインウェアや、冬山仕様のジャケットもおススメです。
そういう季節に私は…

- ベースレイヤー・・・ドライレイヤーベーシック ブラ(finetrack)+スーパーメリノウールL.W.ラウンドネックシャツ(モンベル)
- ミドルレイヤー・・・R1エア ジップネック(パタゴニア)
- アウターレイヤー・・・ティフォン50000ストレッチジャケット(ミレー)
を着ていきます。
パタゴニアのR1エアは中厚手のフリースです。保温性がありながら通気性もあるのが特長です。気温0℃でも歩いている時は暑いので、行動中も着ていて快適なR1エアは重宝しています。アウターはティフォン50000のハードシェルが基本ですが、山小屋泊りやマイナス気温時は、中綿入りのパタゴニアマイクロパフフーディを着たりします。
パタゴニアのマイクロパフシリーズは、ダウンのように温かい、化繊のインサレーションです。ダウンと違って耐水性があるので、雨が降っても気にならず、極寒の環境下でアウターとして活躍してくれます。ポケッタブル仕様でコンパクトにまとまるのも嬉しいです。
R1エア、マイクロパフフーディは、レビュー記事も書いていますので、良かったら参考にしてください。

休憩時に中間着として着る、薄手のインナーダウンやポリエステル綿のインサレーションを1枚持って行くと安心です。
(写真は、モンベルのプラズマ1000ダウンベスト)
レイヤリングは臨機応変に調整することが大事

ここまで気温別にレイヤリング例を挙げてみましたが、これはあくまで目安とお考え下さい。人によって体感温度は違いますし、登る山の状況によっても選ぶウェアは変わってくるでしょう。
大事なのは寒さに応じて臨機応変にレイヤリングを調整できるかどうかです。レイヤリングは3層と言われますが、3枚という意味ではないのです。
ミドルレイヤーの調整方法
行動中はベースとミドルでの歩きになりますが、ミドルを厚めのもの1枚にしてしまうと、大量の汗をかいた時にそれ以上脱げなくなります。そんな時、薄手の長袖の上に半袖を1枚着ていれば、上の1枚を脱ぐことが出来ます。また、予想以上に寒くなった時も1枚より2枚のほうが保温できます。冬はミドルを2枚着ることはよくあります。
また、昼食などで停滞する時は、汗冷えしないようにすぐに1枚着込むようにしますが、ハードシェルの他に中綿入りのベストやウィンドシェルなどを持っていれば、気温に応じて重ねたりすることが出来ます。
アウターを脱ぐタイミングはいつ?
登山は、常に外気温と体温の調節をしながら歩かねばならないスポーツです。こまめな体温調節はバテない登山にも繋がります。
例えば、歩き始めは体が温まっていないのでアウターを着たまま出発したくなりますが、すぐに暑くなります。もちろん、暑くなってから脱いでもいいのですが、もし登山道が狭かったり、パーティーでの歩きだったりすると、すぐに脱ぐことが出来ない時があります。そういったことが予想される場合、アウターは先に脱いでしまったほうがいいです。つまり、歩き始めは多少寒いくらいのほうがベストです。
また、下山時はずっと下りが続くのか、多少のアップダウンがあるのかでもレイヤリングは変わってきます。午後になり、気温が下がり、ずっと下りの場合、体温は上がらず汗はそれほどかかないことが予想されます。そんな時はアウターを着たまま下山するのもありですね。
行動中は山の状況と気温を考えて、自分のコンディションに合った脱ぎ着ができるといいですね!
まとめ

ここまでレイヤリングの基本と、気温別の秋冬レイヤリング例をご紹介しましたが、少しでも参考になりましたでしょうか?
ベースレイヤーはウール、ポリエステルなどの速乾性のあるもの、ミドルレイヤーはフリースなどの軽くて保温性のあるもの、アウターレイヤーはレインウェアやソフトジャケットなどの防水・耐風性のあるものを中心に選びましょう。
また、今回はご紹介しませんでしたが、ボトムスもタイツと2枚重ねにしたり、冬用の厚手パンツにしたりして冷えに対応できるようにしましょう。
山の天気は変わりやすく、基本装備だけでは不安になってしまうこともあるでしょう。そんな時はプラス1枚、予備に持って行きましょう。それだけで気持ちが楽になり、安心して登山ができるようになりますよ。
それではこれからも楽しい山登りを!
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