U.L.(ウルトラ・ライト)派の登山者にとって、もはや知らない人はいないアウトドアメーカー「山と道」。その中でもバックパックの人気は高く、軽量であることと、細部にこだわりの工夫がされていることが特長です。今回は私が2年間使っているバックパックMINIの使い心地と、使ってみて分かったメリット、デメリットなどをお伝えしたいと思います。
「山と道」について
「山と道」の沿革
「山と道」は、神奈川県鎌倉市に本拠地を置く日本のメーカーです。2011年にハイカーでもあった夫婦お二人が、本当に必要な山道具を自分たちの手で作ろうと始めたのがきっかけだそうです。今では全国的に有名なメーカーになりましたが、大量生産はしておらず、製品は公式オンラインショップ、または国内の限られたショップでしか購入することが出来ません。
「山と道」製品の特長
「山と道」の製品の特長として、山を軽快に歩けるU.L.や、機能性の高いメリノウールや天然素材などの開発、使いやすいデザインなどに力を入れていることが挙げられます。
バックパックは、既製品の他にセミ・カスタムオーダーができます。パーツごとに自分好みのカラー、素材を選ぶことができて、世界に一つしかないバックパックを作れるので人気となっています。
また、経年劣化における穴あきやパーツ補修などの修理にも対応しており、アフターフォローも万全!国内メーカーならではのメリットと言えるでしょう。
製品にはバックパックだけでなく、衣類、帽子、アクセサリーなどもラインアップされています。
MINIの特長
MINIはハイキングやファストパッキングのために、8kg程度までのパックウェイト(食料や水、ギアを入れた総重量)を想定してデザインされたバックパックです。
8㎏というと、だいたい1~2泊の小屋泊装備までかなと思います。
MINIをはじめとする「山と道」のバックパックの最大の特長は、腰で背負うのではなく、肩甲骨から胸骨にかけての上半身で背負うような設計になっていることです。荷重を上半身で分散させることで下半身が自由になり、体全体を使う岩場などを無理なく歩けるようになるのです。ウェストストラップは、腰骨よりやや高い位置にセットします。
MINIには、大きく分けて通常のMINIと、素材や色を自分でカスタマイズできるMINI custom editionの2種類があります。以下にそれぞれの特長をあげてみました。
MINI
通常のMINIは既製品なので、在庫があればすぐに購入することが出来ます。カラーは3種類です。
サイズ | UNISEX M/L(背面長M48cm、L52cm) |
容量 | M:25-30L L:28-32L |
重量 | M:395g(380g) L:411g(398g) |
素材 | body:70D HT PC Coated Ripstop Nylon 106g/㎡ |
front pocket:BLACK UHPE Fine Grid 128g/㎡※ | |
side pocket:Lycra Twill 226g/㎡ | |
bottom:Black UHPE Fine Grid 128g/㎡※ | |
色 | 全3色(Black、Elm、Gray)※ |
アクセサリー | Minimalist Pad (45x90x0.5cm/43g) Hip Belt Reflectable Bungee Cord Repair Tape |
価格 | ¥30,800(税込) |
【追記】※フロントポケット、ボトムに使用されていたX-PACは、2022年モデルより独自開発生地「BLACK UHPE Fine Grid(ブラックウープ)」に変更になりました。さらに軽量で引き裂き強度に優れた耐久性を重視。反面、耐久撥水処理のみで裏面への防水コーティングを施していないため、別途防水対策をする必要があります。また、カラーも従来の4種類から3種類に変更されています。
MINI custom edition
custom editionは、注文を受けてから制作するカスタムオーダー製品です。受注生産によるセミカスタムオーダーのため、年数回の受注期間のみ購入できます。すぐに手にすることは出来ませんが、自分好みのMINIが欲しい方はこちらがおススメです。
選べる内容は以下の4つとなります。
① ボディ(トップの吹流しとサイドパネル)生地
② フロントポケット生地
③ ボトム生地
④ 止水ファスナー
重量:380~398g 価格:35,200円(税込み)
オーダー品になりますので、お値段は通常のMINIより若干お高くなっています。custom editionの詳しい仕様は、山と道公式サイトへ
MINIの詳細をレビュー
ここからは、MINIのデザインと機能、メリット・デメリットをお伝えしていきたいと思います。
デザインと機能
私が使っているのは、バックパックMINI(旧製品)のサイズM(25-30L)、色はGrayです。日帰り登山にちょうどいい大きさで、上部が拡張するので小屋泊一泊にも行けちゃいました。形も可愛くてランドネ風? とは言え、女性だけなく、男性にも似合うように作られているのがニクイところです!
<全体像>
全体像をより分かりやすくするために、手持ちのミレーサースフェー30+5と並べてみました。大きさはほぼ一緒ですが、重さが全然違います。MINI=395g、サースフェー=1,450g
U.L.だけあって本当に軽い!角っぽいフォルムでシンプル。体力のない人でも軽快に歩けそうです。
<サイドポケット>
ライクラ素材の両サイドポケットは500mlのペットボトルが2本入ります。伸縮性がよく、簡単には抜けません。取り出し口は斜めになっていて、背負ったままでもアクセスしやすくなっています。
<フロント部>
大きな外付けポケットは、小物類などがたくさん入って便利。中にキーフックも付いています。素材は撥水効果のあるX-PACと止水ファスナーを使用(2022年度よりブラックウープに変更)。バンジーコードはギアをはさむのに最適で、長さ調節可能。中央のクリップフックで簡単に外せます。ポケットの下のほうに水抜きの穴があります。
<メイン開口部①>
巾着型になっていて、紐でワンタッチオープン。
2021年仕様から更に簡単に開けられるように改良されています。
<メイン開口部②>
巾着をクルクルっと巻いたら、トップストラップで固定します。
吹き流しの長さは23cmあります。ここで約5Lの拡張ができます。
<内部>
内部に内ポケットなどは一切ありません。ウォーターバッグ用?のループが4か所と、チューブを出す穴が左右に1つずつ開いています。
<背面>
背面は行動時に横ブレしにくいグリップ力に優れたメッシュ素材を採用。
背面パッドMinimalist Pad
取り出してスリーピングパッドにも仕様可能。
夏用背面パッド(左)
オプションの夏仕様と入れ替えが可能です。
<ショルダーハーネス>
ショルダーハーネスの厚さは約1cm。厚くもなく薄くもなく、適度な弾力があります。ショルダースタビライザーはありません。
<ショルダーハーネス使用例>
上と下にカラビナを掛けられるループ付き。ドリンクホルダーやスマホケースなどをつけることが出来ます。
<チェストストラップ>
チェストストラップは緊急時用のホイッスルつきで、上下に手動で移動可能。動きはかなり硬いので、下がってくることはないです。バックルは片手ではめることができます。
<ヒップベルト>
取り外し可能です。サイドポケットはありません。
オプションでZip packを取り付けることができます。
<ボトムアタッチメントループとアックス/ポールループ>
フロントの両側にループがあり、ポールやアイスアックスなどを取り付けることが出来ます。
2021年モデルよりアックス/ポール用ループが、より取り付け・取り外しのしやすい形状に変更されました。
下部ループ詳細
フックを締め付けてしっかり固定できます。
<サイドストラップ>
Z状に掛けられたサイドストラップは、自由自在に締めたり緩めたりできます。内容物の固定にも便利です。
トレッキングポールもしっかり固定できます。
機能拡張オプション
MINIの機能性や容量を拡張できるオプション品があります。必要に応じて買い足すことで、さらに自分仕様にカスタマイズすることが出来ます。
Zip Pack 3,300円(税込み)
Material:
200D HT PC Coated Oxford Nylon 144g/㎡
Zipper:
YKK #3 Aquaguard®︎
Weight:
32g / 1.1oz
Size:
H125mm x W205mm x D35mm
Stuff Pack XL 3,630円(税込み)
Material:
X-Pac VX03
70D PU Coated Ripstop Nylon
Weight:
66g / 2.3oz
Capacity:
9L
Breatable Pad for MINI 2,530円(税込み)
Weight:
130g(Breathable Pad 108g + Thin Pad 28g) / 3.8oz+0.98oz(Size M)
154g(Breathable Pad 125g + Thin Pad 29g) / 4.4oz+1.02oz(Size L)
Size:
Breathable Pad 48cm × 24cm × 2cm(Size M)
Thin Pad 45cm x 23cm × 0.35~0.45cm(Size M)
Breathable Pad 52cm × 24cm × 2cm(Size L)
Thin Pad 49cm x 23cm × 0.35~0.45cm(Size L)
メリットとデメリット
私が実際にMINIを使って行く中で、ここはいい!、ここはちょっと…な感想をまとめてみました。あくまで個人の感想なので、参考程度にお読みくださいね。
<メリット>
- とにかく軽いのが最高。中に入れる装備が重い時には、バックパック自体を少しでも軽くしたいもの。そんな時にMINIは使えると思う。強度も不満はない。
- 見た目がお洒落で、登山用バックパックらしくないのもポイント高い。
- 基本はシンプルで、機能拡張、オプションが充実している。要るものと要らないものとを自分で選べるので、そこもU.L.に繋がると思う。
- 腰で背負うのではなく、肩で背負う発想は支持できる。おかげで骨盤のこすれがなくなったし、ちゃんと背負えば肩の痛みもほとんどない。(8kg超えるとどうなるかは分からない)
<デメリット>
- 背面パッドが柔らかいため、背中側に凹凸のあるものを入れると背中の当たりが気になる。また、外ポケットにものを入れ過ぎるとメインが入れづらくなる。荷物の入れ方に工夫が必要。
- 背面形状はフラットなので汗抜けはあまり良くない。また、付属のパッドは夏は暑いかも。ただ、オプションで夏用パッドがあるので問題なし。私の場合は一年中夏用パッドです(^^;
- 縦に長く、生地の色も黒いため、内容物を探しづらい(2022年度版から白に変更されています)。あとは、もう1箇所ファスナーがあればいいなといつも思う。
- お値段が高い。ガレージブランドの宿命か。
まとめ
相対的に見て、私はMINIは買いだと思います。なぜなら、私が常日頃「ザックがもう少し軽ければいいなぁ」と思っていたことを、形にしてくれたのが「山と道」のバックパックだったからです。
日帰りのハイキングや山小屋泊りのトレッキング程度ならMINIで十分ですし、自分にとって必要なパーツだけを装備するという後付け感覚も、これまでにあった至れり尽くせりなバックパックと根本から考え方が違います。
どちらのタイプのバックパックを選ぶかは、登る山の状況や装備の量によって臨機応変に決めればいいので、私はこれからも従来型の堅牢なザックも使っていくつもりです。とは言え、パンドラの箱を開けてしまった感は否めません(笑) 軽いザックはやっぱり魅力的だと思いました。
それではこれからも楽しい山登りを!
詳しい情報は山と道公式サイトで。
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