登山の3種の神器のひとつ「登山靴」。登山靴は山を歩く際、私達の足を悪路や怪我から守ってくれる大事なギアです。ですから、しっかりした素材、安心できる品質はもちろんのこと、なによりも自分の足に合った靴を選ぶことがとても重要です。これから登山を始める方のために、登山靴の知識、正しい登山靴の選び方を解説します。
登山靴の特長を知ろう

「山を歩く時はスニーカーじゃダメなの?」「なんで登山靴は値段が高いの?」そんな声が登山初心者の中から聞こえてきそうです。私も山を登り始めたころは登山靴の値段に目が飛び出ました。ほんと登山靴って高いんですよ!でも登山靴は、山道の過酷な状況や、登山者の疲労蓄積などに耐えられるよう、とても強固な作りになっているので、高いのは当たり前なんですよね。
結論から申し上げますと、本格的に登山を始めたいなら登山靴にはこだわりましょう。お金をケチって後で後悔しないよう、価格や素材を十分考慮したうえで、自分の足に合ったものを選びましょう。
そこで、まずは登山靴にはどんな特長があるのか、購入する前に登山靴の基礎知識を知っておきましょう!
①靴上部(アッパー)が丈夫

登山靴、最初に見た時は「ごつっ!」って思いますよね。それには理由があります。
登山道はアスファルトの道と違い、石、砂利、草、木の根、ぬかるみなどで、大変歩きにくい道となっています。ときには石に躓いてつま先を強打したり、バランスを崩して足首をひねったりすることもあります。そのため、登山靴のアッパーは全体的に硬く丈夫に作られており、つま先や踵も別素材で補強され、靴の高さもくるぶしまであります。
主な素材は、ヌバック、ナイロン、スウェード、レザーなどで、それらを組み合わせた靴が主流です。登山者の足を分厚い素材でしっかりと保護することで、快適な山歩きを可能にしてくれているのです。
②靴底(ソール)が硬い

スニーカーや運動靴のように靴底が柔らかいものは、ゴツゴツした石や岩の感触をまともに受けてしまい、足裏の疲労や痛みの原因になります。登山靴のソールは特殊な合成ゴムでできており、とても硬く、溝も深いため、足裏をしっかり保護し、滑りを軽減してくれます。この硬さにはレベルがあり、高山用・岩稜用になるほどソールの硬さはレベルアップします。

靴底で有名な素材は、Vibram(ヴィムラム)ソールです。ヴィムラムはイタリアの靴底メーカーで、世界的にも有名です。耐久性、グリップ力に優れていて安心の品質。靴選びの指標のひとつになるでしょう。
③防水機能がある

山では雨の日に歩いたり、渡渉する(川を渡る)こともあります。靴の中が水で濡れてしまうと、最悪足がふやけて皮膚がめくれ歩行ができなくなってしまいます。そのため、ほとんどの登山靴は濡れても大丈夫な素材で出来ています。

有名なものは「防水透湿性ゴアテックス」仕様のものです。ゴアテックスは、水の侵入を防ぎながら内部の湿気を逃がすという特性を持っています。ゴアテックス仕様は多少高価になりますが、最初に選んでおけば間違いありませんので、私は強くお勧めします!運動靴やトレランシューズは、ほとんど防水性がありませんので注意しましょう。
登山靴の種類は3つ
一口に登山靴と言っても3つの種類があります。登山靴のくるぶし丈の長さによって「ハイカット」「ミドルカット」「ローカット」と呼ばれ、歩く山の形状や登山者の熟練度で使い分けをします。
【ハイカット】

高山や岩稜帯に特化した靴。高さもくるぶしが完全に隠れます。底が硬く、重量もあるので中級者以上向き。低山に慣れてきて、これから高山に挑戦したい人にもおすすめ。防寒性能が高い冬山仕様もあります。
【ミドルカット】

ハイカットに比べて底が比較的柔らかいので初心者でも歩きやすく、高さもくるぶしの辺りまではあるので足首も安心。ハイカットに比べて重量も軽めなので、最初に購入する登山靴としておすすめ。
【ローカット】

ハイキング、ウォーキング、トレラン向き。くるぶしは隠れないが足首の動きを妨げないので歩行の自由度は上がります。半面、足首の支え、つま先補強、防水機能がないものが多いので、長時間の登山には不向き。軽度なウォーキングなら十分なスペックです。既に足首や足底に筋力がついている中・上級者の靴選びとしても選択肢になることがあります。
登山靴購入時の注意点
登山靴を購入する際は、購入前に準備したほうがいいもの、購入時に注意する事がいくつかありますのでご紹介します。
登山用靴下を用意しよう

登山靴を履くときには、登山専用の厚手の登山靴下を履きます。それを履くことでクッション性が良くなり、靴ずれ防止や足底疲れを軽減してくれます。
靴下は登山靴を試着する店舗で貸してもらえますが、微妙に厚みが違ったりするので、できれば自分で事前に準備したほうがいいと思います。靴下はスポーツ用品店や登山用品店、インターネット通販でも買うことが出来ます。靴を購入する時に、一緒に買ってもいいでしょう。
おすすめは、防臭性・保温性に強いスマートウール社、FITS社などのメリノウール素材、吸汗速乾性・耐久性に優れたモンベル社のウィックロン素材などです!季節に合わせて何足か用意しておくといいでしょう。
登山靴サイズは普段より1cm大きいものを選ぶ
登山靴のサイズ選びで大事なことは、「つま先にゆとりを持たせる」ことです。
もし、普段と同じサイズを選んでしまうと、長い下りで足が前に出た時に、つま先が靴に当たって指に痛みが出たり、爪が黒く変色してしまうことがあるからです。そうならないよう、登山靴はかかとを靴に密着させた状態で靴紐でしっかり固定し、つま先に空間をあけるようにして履くのです。
つま先のゆとりには、
隙間をあける分5mm + 厚手の靴下の分5mm = 合計1cm の空間が必要です。
例えば、普段24cmの靴を履いている人は、登山靴は25cmとなります。ただ、靴の形状によっては必ずしも1cm大きいものがいいとも言い切れません。これは実際に試着してみないと分かりませんが、足の指が靴の中で自由に動かせることを目安にしてみましょう。
購入は登山専門店がおススメ

登山靴はどこで買ったらいいのか悩みますよね!今はネットでも返品OKで購入できたりしますが、最初はやはり実店舗で購入するのがベストです!さらに言えば、一般スポーツ用品店より登山専門店がいいでしょう。それには理由があります。
- 登山専門店には登山知識が豊富な店員がいて安心
- 足のサイズを測る器具があるので、自分の正確なサイズ・幅が分かる
- スロープがあるので、坂道の疑似体験ができる
- アフターサービス(修理・メンテナンス)を受けられる
- 商品の品ぞろえが豊富
- 靴の履き方、靴ひもの締め方などを教えてくれる
購入時には、店員さんにまずどんな山に登りたいかを伝えてみましょう。「低山から始めたい」「3,000m級の高山に登りたい」「冬山に登りたい」など、状況に合わせて最適な登山靴を選んでもらえますよ。
試し履きの際のチェック項目は以下の3点です!
足のサイズを測定してもらおう

自分の足のサイズって正確にわかっていますか?私は自分では24cmだと思っていたのですが、器具で測ってもらったら24.5cmでした。また、横幅が3Eだと思っていたのですが、実際はそれほど広くなかったのです。
このように思い込みで自分のサイズを決めてしまっていることってよくあるので、一度店舗で正確に足の測定をしてもらうことをおススメします。お店には足のサイズを測定する器具がありますよ。また、靴の中敷き(インソール)をいったん出して、そこに足を乗せることでサイズチェックを行うこともしたりします。これにより、試し履きする前に靴が合うか合わないかをおおまかに判断することが出来ます。
スロープを使って歩いてみよう

2~3種類の靴を出してもらったら、履き比べてみてどの靴が自分に合っているか時間をかけて試してみましょう。靴ひもは店員さんが締めてくれますので、ついでに締め方を教わりましょう。
登山靴コーナーにはスロープが置いてありますので、前に重心を掛けたり、横に重心を傾けたりして、つま先や側面、かかとに痛みが出ないか、遊びはないかをチェックします。コツはかなり負荷をかけて歩くことです!
もし、スロープがない店だった場合、そこで買うのはやめましょう!
登山靴はブランドで決めない
人間の足型は千差万別です。日本人は横幅が広くて甲が高く、欧米人は横幅が狭くて甲が薄いという傾向があります(すべての人がそうではありません)。そのため、登山靴も海外のメーカーは日本のメーカーに比べて幅が狭いものが多かったりします。
また、つま先の形も、親指が一番長い「エジプト型」、人差し指が一番長い「ギリシャ型」、すべての指が同じ長さの「スクエア型」があります。
そのため、靴選びはサイズと同時に、横幅(ワイズ)や、つま先形状にも気を配る必要があります。自分が好きな海外ブランドを履きたい気持ちだけで靴を選ぶと、大抵失敗しますのでお気を付けください。ただ、海外ブランドの中には、日本人に合わせて開発した幅の広いシリーズもありますので、すべてが細めではありません。
反対に、痛みを恐れるあまり、ぶかぶかの靴を選んでも失敗します。足が靴の中で左右・前後に遊んでしまうことで靴擦れを起こします。靴は小さすぎても大きすぎてもトラブルの元なのです。そのためにも足の計測はちゃんとしてもらいましょう。
大事なのは、ブランドに惑わされず、実際に履いてみて自分の足にフィットする靴を選ぶことです。
登山靴のトラブルの原因と対処法

登山靴を購入したら、必ず足慣らしの為に近場の低山を軽く歩いてみましょう。時間にしたら1時間~2時間程度でいいと思います。いきなり本番で長い距離を歩いてしまうと、もし靴が合わなかった時に大変です。
慎重に選んで購入した靴でも、実際に歩いてみたら思ったよりキツかった、またはゆるかった、指が当たって痛くなったということが稀にあります。そんな時、自分で出来る対処法がいくつかありますのでご紹介します。
つま先(爪)が痛い
靴のサイズが小さい・・・靴下を薄めのものにする、インソールを薄いものに替えるなどして、靴の中に出来るだけ空間を作ってあげましょう。
靴ひもがゆるい・・・靴ひもの縛り方がゆるいため、下りで足が前に移動してしまうことがよくあります。足首までしっかり縛って様子を見てみましょう。
爪が長い・・・爪が長いままだと、靴に当たって割れたり黒く変色したりするので、登山の前日に爪を切る習慣をつけましょう。
踵が靴擦れする
踵と靴の形状が合っていない・・・靴のカップ形状が広いと踵が遊んで靴擦れの原因に。靴下を厚くしたり、インソールを替えて当たる位置をずらしてみましょう。
靴ひもをしっかり締めていない・・・靴ひもの上部をしっかり締めていないと、歩く時に踵が上がって靴擦れの原因に。足首までしっかり締めるように心がけましょう。
小指の側面が痛い
靴のワイズ・形状が合っていない・・・靴の幅が狭かったり、形状が足指にフィットしていないために、重心が外側に移動するたびに小指が当たります。小指に靴ずれ防止パッドを貼ってみたり、靴の幅をシューズストレッチャーで広げてみましょう。
シューズストレッチャーとは・・・革靴の窮屈な各所、幅を伸ばすことができます。一台で左右両方の靴に使用できます。 部分拡張用の大中小のパーツ(ダボ)を使用して、部分的に伸ばすこともできます。

これは実際、私がやってみた対処法なのですが、片方の靴だけ小指の側面が当たり痛みが出そうだったので、シューズストレッチャーを使って幅を若干広げてみました。使用方法は、広げたい箇所に拡張パーツをはめ、靴に挿入します。ハンドルを回して靴表面の皮が張った状態で止め、24時間ほど放置したあとハンドルを戻します。幸い、うまくいってその後は痛みなく履けています。
注意
靴の硬さによっては効果がない場合もあり、また、あまり強引に広げすぎると靴の形がいびつになってしまったりするので、様子を見ながら少しずつ行ってください。これはあくまでも自己責任でお願いします。
靴の中に隙間があり足がずれる
ワイズの広すぎる靴を履いている・・・大きい靴を小さくすることは出来ないので、靴ひもを強めに締める、靴下を2重にする、インソールを厚めにするなどして足を靴に合わせてみましょう。
以上の方法を行っても効果がない場合は、購入したお店に靴を持って行ってご相談ください。それでもダメな場合は、泣く泣く靴を手放すことになるかもしれません。そうならないためにも、靴選びは慎重に行うことをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?登山靴選びで失敗しないための注意点をまとめますと、
- 最初に登山用靴下を買っておく
- 初心者はミドルカットがおすすめ
- 登山靴のサイズは通常の靴より1cm大きいものを選ぶ
- 購入は専門家のいる登山用品店で!
- ブランドに惑わされず自分の足に合った靴を選ぶ
- トラブルが起きた場合、自己対処法で直らない場合はお店に相談しよう
になります!少しでも参考になれば幸いです。
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