これから登山を始めてみたい方、すでに登山を始めている初心者の方、登山のルールを知っていますか?どんなスポーツにもルールがあるように、山登りにもルールがあります。ルールを知ることで気持ちの良い山行ができたり、怪我や遭難の防止につながります。登山者の心得として、今一度ルールやマナーについて確認してみましょう。
ここでは「気持ちよく登山をするためのルール」と「安全に登山するためのルール」の二つに分けてご紹介します。
■気持ちよく登山するためのルール■
ルールと言ってもそれほど難しい事ではなく、人として常識的な心得を持っていれば守れることばかりです。ただ、事前知識がないまま山に入ってしまうと、先輩の方に叱られてしまったり、恥ずかしい思いをしたりすることもあり、山行自体が後味の悪いものになってしまいます。そのようなことを避けるためにも、基本的なルールを知っておくことは大事な事と言えるでしょう。
あいさつは登山の基本!でも臨機応変に
登山道ですれ違ったら「こんにちは!」。これ、登山では常識です。ルールというよりは日常的な慣習ですよね。知らない人との挨拶に慣れていない人は、最初は躊躇することもあるでしょう。でも山登りにおいては、知らない人同士で挨拶をするのには以下のような理由があります。
- 挨拶をすることでお互いの顔や特長を覚えるので、万が一遭難した場合の手掛かりになる。
- コース状況や山頂の天気を聞けることもあり、情報交換のきっかけになる。
- あいさつから会話が発展し、山友になれたりする。
- あいさつをすると気持ちがいい!
街中と違って、山の中で人と会うことはそれほど多くはありません。特に平日のマイナーな山では、単独で登っている場合は不安な気持ちになったりします。そんな時、1人でも登山者に会うとホッとするんですよね。挨拶をすることで気持ちがほっこりしたり、登山者同士で会話が生れることもあります。進んで挨拶をするようにしましょう。
でも、挨拶を控えたほうがいい時もあります。以下の場合は臨機応変に対応しましょう。
- 急坂を登ってくる人が、とても苦しそうで挨拶どころではない場合。
- 大人数の団体さんとすれ違う場合。
- メジャーな山、または観光的なハイキングコースで人通りが激しい登山道。
- 感染症対策でマスクをしている場合。
登りで苦しい時は息が切れて、挨拶をするのもしんどい時があります。向こうから挨拶が来るかどうか少し待ってみましょう。また、ツアーなどの団体さんや、人気のハイキングコースなどで登山者が多い場合も省略して構いません。1人1人に挨拶していたら大変です。
最近では、新型コロナ感染症の影響でマスクをしている人も多く、会話を避ける傾向があります。心配な場合は軽く頭を下げ会釈をするだけでいいでしょう。
「すれ違い」は上り優先?下り優先?
幅の狭い登山道で対向者に出会った時、どちらかが避けて待たないとすれ違いができない場面は多々あります。そんな時、登山のルールでは「基本的に上りが優先」です。理由は、①下りの人のほうが先に対向者に気付くことができる為、待機場所を作りやすい。②上りの人のペースを崩させない、などがあります。
上りの人はうつ向きがちに歩くことが多いため、上部に登山者がいることに全く気付いていない人が大変多いです。私が道を開けて待っていると、直前で飛び上がって驚かれる人がいます。上りの時は時々上を見て状況確認しながら登りましょう。
すれ違いは上り優先と書きましたが例外もあります。以下の場合は臨機応変に対応しましょう。
- 上りの人が疲れていて休みたい時(「どうぞお先に」と声がかかる場合がほとんど)
- 大人数のほうが上り下り関係なく相手を先に通す(長時間相手を待たせない!)
- 下りの人が危険な場所にいる時は先に上ってあげよう(待機場所を確保できないことがある)
避ける際には、①山側に寄り、②ザックを山側に向け、③体は登山道に向けるようにします。理由は、谷側に寄ってしまうと滑落の危険があることと、ザックを登山道側に向けてしまうと、通行人の邪魔になったり、接触して滑落させてしまう可能性があるからです。
「追い越し」のルール
同じ方向に歩く場合の追い越しのルールは、「ペースが速い人を優先」します。当然と言えば当然ですが、団体で歩いている時は、お喋りに夢中になって後ろから来る人に気付かない事があります。最後尾の人は常に後方に気を配り、「後ろから1名来ます」などと先頭に伝え、立ち止まってもらうようにしましょう。
また、追い越す人は「お先に」「ありがとうございます」などと一言告げて、感謝の意を伝えましょう。
草花を持ち帰らない
山では生態系保全の観点から、植物やコケ、石等を採取することはNGです。国が自然保護の目的で定めている「国立公園」や「世界遺産」「自然公園」は特に厳しく、「私有地」でも立て看板を立てて植物を採取しないように厳しく警告していたり、囲いやロープで侵入を禁止している区域があります。「家の庭に植えてみたい」「登頂記念に」などと言って持ち帰らないようにしましょう。ひどい例では、高山に辛うじて生育している絶滅危惧種を盗掘する輩がいます。悲しい事です。そもそも高山植物が家の庭で育つはずもありません。高山植物は高山に咲いているからこそ美しいのです。
ゴミや残り汁は捨てない
登山道を歩いていると、お菓子の個包装紙、マスク、ティッシュ、手袋などの小物が落ちているのをよく目にします。山にない人工物は自然環境破壊につながります。故意ではないにしても、ポケットからの落とし物には気をつけましょう。
また、山にゴミ箱はありません。ポイ捨てはもってのほか。調理で出た食べかすや残り汁(水を除く)も捨ててはいけません。各人でゴミを出さない工夫をしましょう。
- ビニールのゴミ袋を持参し、自分で出したゴミはすべて持ち帰りましょう。
- 行動食の包み紙は外せるものは外し、ナルゲンやジップロックに直に入れましょう。
- 野菜は家で下処理をして、皮やくずが出ないようにしましょう。
- 余った汁はペーパーに吸わせたり、ジェル材で固めてから持ち帰りましょう。
【残り汁の処理に】
トイレットペーパーの芯を取り、押しつぶしてジップロックに入れます。取り出すときは内側から引っ張り出すと簡単です。汁の量が多い時は、天ぷら油処理パックがおススメです。
そもそも汁を出さない工夫も必要です。汁が出やすいパスタは、ごく少量の水で茹でてソースと絡めるか、家で茹でて冷凍していきます。
標柱、三角点のそばにモノを置かない座らない
山頂に到着したら、誰でも標柱や三角点を単独で写真に収めたいと思うことでしょう。そんな時、ザックがそばに置いてあったら?すぐそばでお弁当を広げている人がいたら?絶対写真に写り込みますよね。意外と気付かない人が多く、立てかけるのにちょうどいいからと安易な気持ちで荷物を置いてしまいます。かと言ってそういった人に「邪魔だからどけて」とも言いづらい。標柱付近は空けておきましょう。
混んでいる時は写真撮影も順番待ちになります。長時間の撮影はやめましょう。山頂はみんなのもの。気持ちよく過ごせるよう、ちょっとした気遣いをお忘れなく。
トイレは有料が多いので100円玉を用意しよう
山のトイレは不便な場所ほど有料な所が多いです。山小屋はほぼ有料です。汚物処理・運搬や水の確保に管理費がかかるため、感謝の気持ちを込めて支払いましょう。概ね100円~200円ほどです。釣銭はありませんので100円玉の用意を忘れないようにしましょう。
そのポールの使い方、合ってますか?
上の写真は登山用のトレッキングポールです。左はポールの石突き(先端部)にラバーキャップをかぶせた状態で、右はラバーキャップを外した状態です。どのように使ったらいいか、知っていますか?
無雪期登山での使い方
無雪期登山ではラバーキャップをかぶせた状態で使いましょう。理由は、登山道や草花の保護のためです。ラバーキャップを外していると、尖った先端部で登山道に穴をあけたり、木道を傷めたり、お花を突き刺してしまいます。昨今、登山人口が増えたことで登山道の荒れが著しく、登山道整備の方や山小屋ではラバーキャップを付けることを推奨しています。たまに外した状態で歩いている人がいて、山の先輩に怒られています。岩場を除き、無雪期ではラバーキャップを付けて歩くようにしましょう。
積雪期登山での使い方
積雪期登山ではラバーキャップを外しましょう。ラバーキャップを付けたままだと、アイスバーン時にツルツル滑ってしまって危険です。また、バスケットも雪山専用のスノーバスケットに交換しましょう。
上の画像は、左が通常のトレッキングバスケット、右が雪山専用のスノーバスケットになります。スノーバスケットはトレッキングバスケットより面積が広く抵抗力が増すため、雪面に刺した場合、雪に潜りづらいメリットがあります。あまりにも雪深いと役に立たない場合がありますが、それでも面積が大きいほうが歩きやすく、転倒リスクも下げることができます。
スノーバスケットは、購入したトレッキングポールに付属している場合がほとんどですが、別売りで販売している商品もあります。雪山に行く際は必需品になりますので、事前に確認しておきましょう。
電車内での持ち運び方
公共の場、特に満員電車内ではポールが他の人の邪魔になったり、先端部分で怪我をさせてしまうことがあります。可能であればザックやバッグに仕舞うか、仕舞えない場合は保護キャップを付けて手で持ちましょう。
【100均の椅子の足カバーがぴったり】
保護カバーに最適なのが、100均などで売っている椅子の足カバーです。伸縮性があるので外れにくく、可愛いものが多いのでおススメです。足カバーは4つで1セットなので、1つ無くしても予備があるのも嬉しい。お気に入りのものを探してみて!
汚れた登山靴のまま電車や車に乗らない
ここでは下山した後のマナーについて考えてみましょう。電車やバスで登山に行く場合や、誰かの車に乗せていってもらう場合、泥で汚れた登山靴をどうしたらいいか?という問題です。もちろんそのまま履いて帰ることはNGです(下山時に靴洗い場で泥よごれを洗い流せる場合を除く)。公共交通機関や人の車を汚すことはやめましょう。
ではどうしたらいいでしょうか?これは人によって様々ですが、私の場合、「ビニール袋」「サブバッグ」「サブシューズ」を使用してスピーディにお片づけをしています。
下山したらまず、サブバッグに入れておいたサブシューズをビニール袋から取り出し履き替えます。脱いだ登山靴と靴下をビニール袋に仕舞い、サブバッグに入れて終了です。ちなみにザックに登山靴は入れません(重くなるし入れるスペースもない)。電車でもバスでもサブバッグを手に持って移動します。車なら荷室にそのままポンと入れて終了です。
ビニール袋のオススメ
ビニール袋は登山靴が入るものなら何でも大丈夫です。コンビニ袋でもいいですが、私は一度に両方入る大きめで丈夫なものを使っています。パッケージショップなどで購入することができます。
サブシューズのオススメ
サブシューズは軽くて嵩張らないものが便利です。夏場なら宿泊登山の山頂でも安心して使えるストラップ付きのサンダル、冬場はローカットのランニングシューズやトレランシューズが良いと思います。お気に入りのサブシューズを見つけて、下山後は疲れた足を早目に開放してあげましょう。
【クロックス/スウィフトウォーター メッシュ デック サンダル】
私が夏場を中心に使用しているクロックスのサンダルです。一見クロックスらしからぬデザイン。メッシュ地が柔らかいので、つぶしてコンパクトになります。ストラップも付いているので山頂の岩場でも安心。車の運転にも使えるし、電車内でも違和感なし。小さいサイズがないのが残念。(25cmから)
サブバッグのオススメ
汚れた登山靴はもちろんのこと、日帰り入浴セットを入れておくのにも便利なサブバッグは、一つ持っていると便利ですよ。
【モンベル/ギアコンテナ】
私が使用しているのはモンベルのギアコンテナです。手提げ、背負いの二通りの使い方ができます。開口部はジッパーとバックルで中身の荷崩れを防ぎ、外にもポケットが一つ。丈夫で軽く、気に入っています。サイズはS,M,Lの3種類があります。私が持っているのは旧タイプで、高さ40×幅42×奥行15(cm)です。参考にしてください。
睡眠妨害の元凶「コンビニ袋」はNG
宿泊登山をする時に気をつけたいのがコンビニ袋です。手提げゴミ袋、半透明ゴミ袋も同様です。コンビニ袋は登山ギアのパッキングやゴミ袋に使えますが、反面ガサガサ音がとても響きます。早朝に荷造りをしたりすると、他の登山者の安眠妨害になるので気をつけましょう。私の経験談ですが、早朝、山小屋の隣の部屋から聞こえて寝られなくなりました(同室じゃなくて隣室ですよ!)。山小屋は壁が薄いのです。「うるさい!」と怒鳴られることもあるので注意しましょう。
パッキングするなら寝る前に。そもそもコンビニ袋じゃなくてスタッフバッグを使いましょう。登山用のスタッフバッグは音もしないし、使いやすいですよ。
■安全に登山するためのルール■
ここからは、知らないと遭難や怪我など命の危険につながる、登山をする上で絶対に知っておかないといけないルールについて再確認していきたいと思います。
早出早着!15時頃までに登山終了を目標に
登山者の朝は早いです。日の出前後に行動を開始し、昼過ぎ(~14時頃)にはその日の登山を終了していることが多いです。これは日帰りでも小屋泊・テント泊でも同様です。道中で何が起こるか分からないのが登山。そのためにも十分に余裕を持った計画を立てることは勿論、以下のような理由から早出早着を推奨しています。
- 山の天候を考慮ー午前は天気が比較的安定している。午後はガスが出やすく、雷の発生率も高いうえ雨になることが多いため、午前を中心に計画を立てる。
- 日没時間を考慮ー冬は特に日没時間が早く、樹林帯では天気が悪いと夕暮れでも大変暗くなるため、滑落、道迷いの危険度が増す。
- アクシデントを考慮ー道迷いや怪我などでタイムロスが起きた場合でも、余裕を持った行程であれば安心できる。
山小屋では、無連絡で到着が日没を過ぎると遭難の可能性を疑い、捜索隊を結成することがあります。到着時間が早すぎて怒られることはありませんので、できれば15時頃、遅くとも16時頃までには小屋に着けるようにしましょう。
また、行動中に日没になると、ヘッドランプを持参していない限りまったく歩けなくなってしまいます。山の夜ほど怖いものはありません。さらに冬山だったら低体温症で命の危険すら出てきます。他の人に迷惑を掛けないためにも、自分のペースに合わせてゆとりをもった登山計画を立てましょう。
アクシデントに対応できる装備を持とう
自然が相手の登山では何が起こるか分かりません。思わぬアクシデントに見舞われた時、「持っていてよかった!」と思える装備があれば安心です。いつもザックに入れてあげてほしい基本的なアイテムをご紹介します。
- レインウェアー基本中の基本。山はいつ雨が降ってくるか分かりません。水濡れは体感温度を下げて危険です。天気予報が晴れでも必ず持っていたい。保温着の役割も果たしてくれます。
- 救急セットー転んで怪我をした、蜂に刺された、ひざ痛悪化などに対応した医薬品を忘れずに。
- ヘッドライトー道迷いをして日没になってしまった時の強い味方です。
- エマージェンシーシートービバーク(停滞)時や遭難時の低体温症予防に。防災用品としても使えます。
- 地図とコンパスースマホの電源が切れたり、GPSが効かなくなった時のために持っていたいのが地図(地形図や登山地図)とコンパスです。地図読み講習会にも積極的に参加して、読図ができるようになりましょう。
- ホイッスルーザックのチェストストラップに付属していることもあります。遭難時、自分の居場所を伝えることができます。
- 靴ひもー予備として1本。登山中に靴ひもが切れたり、靴底が剥がれた時などに使えます。
- 非常食と水ー行動食とは別に用意しましょう。日持ちのする羊羹やチョコレートなど。水は下山時に500mlが残るように余分に持って行くと安心です。
恥ずかしがらずに「ラク!」と叫ぼう
登山中に注意したいのが落石です。崖の上から偶発的に落ちてくる石もありますが、人為的なミスにより石を落としてしまう確率のほうが私は多いと思います。もし自分が登山道を歩いていて、または岩場を登っていて石を下に落としてしまったら?その時、下に人がいたら?最悪ケガをさせてしまう恐れがあります。
そんな時はすぐに大きな声で「ラク!」と叫んで注意喚起をしましょう。
「ラク」とは登山用語で「落石」の意味です。人によっては「ラークッ!」「ラク、ラク!」「落石!」だったりします。どのような言葉でもいいので、大声で叫ぶことが大事です。絶対に黙っていてはいけません。自分が原因でなくてもいいのです。最初は声が出ないかもしれませんが、危険回避のため恥ずかしがらずに叫びましょう。
また、石を落とさない工夫も必要です。ガレ場など石がゴロゴロしている場所では特に注意しましょう。浮石を踏まない、歩幅を小さくする、靴の裏全体で着地する、足を後ろや前に蹴り出さない等、登山の基本的な歩き方が役に立ちます。自身の転倒防止にもなりますね。
もし、上から石が落ちてきた場合は、咄嗟に頭を防御する体制を取りましょう。ヘルメットを被っていれば多少は安心ですが、なければ腕で頭を覆いましょう。自分が加害者にも被害者にもならないよう、常に上下に気を配ることが大事です。
ハシゴ・クサリ場での注意点
ハシゴやクサリは急な斜面に取り付けられていることが殆どなので、ルールを守らないと怪我をしたり周りの人に迷惑を掛けたりして大変危険です。以下のことに注意しましょう。
- ハシゴやクサリ場を登り下りする時はひとりずつ。上の人が落下した時に巻き添えになることを防ぐためと、落石が起きた際の怪我を防止するため。クサリは、同時に二人以上が持つと揺れて危険です。必ず前の人が手を離してから掴むようにしましょう。
- ハシゴをつかむ時は横棒をしっかり持ちましょう。両側の縦の部分を持ってしまうと、足を踏み外した際に掴む場所がなく滑って危険です。必ず横棒を掴みましょう。
- クサリに頼り過ぎないようにしましょう。クサリは100%安全とは言えません。経年劣化で支柱が外れる危険も!あくまで補助の役割とし、なるべく自分の足と腕で登り下りできるよう練習しましょう。
ハシゴ・クサリ場は高度感もあり、慣れていないと大変緊張します。初心者はいきなりソロで行くのではなく、最初は経験者と一緒に行動する、登山講習会で技術を身に付ける、場所によってはヘルメットを装着するなどして、安全で楽しい登山になるよう心がけましょう。
登山道を外れない
どの山にも土地所有者がいます。私たちはよそ様の私有地を歩かせてもらっているという意識を忘れてはいけません。バリエーションルート(地図上では破線)を歩く人もいますが、初心者には難易度が高いので、できるだけ登山コースとして定められた道を歩くようにしましょう。
また、登山コースを外れてしまうと、以下のようなトラブルに遭うことがあるので気をつけましょう。
- 地面が踏み固められていないため、土がもろく斜面では滑ることがあります。
- 地面から生えている草木の枝がズボンの中に入り込み、足を怪我することがあります。
- 動物のトイレがあったり、熊、蛇、マダニなどの被害に遭うことがあります。
- 道がはっきりしていないため、道迷いの危険が高まります。
場所によっては、植物を保護するために木道を設置している場合があります。入笠湿原や尾瀬などが有名です。そういった場所では木道から降りて写真を撮ったりしないようにしましょう。
道に迷った時の対処法
上記で「登山道を外れない」と言いましたが、故意ではなく道に迷って登山道から外れてしまう場合もありますよね。そういった場合の対処法があります。覚えておきましょう。
- 道に迷ったかもしれないと思った時点で、本来のルートとそう離れていない場合には、すぐに来た道を引き返し分岐まで戻りましょう。
- 来た道も分からなくなってしまったら、下らずに上に登りましょう。登山道に復帰できる場合が多く、遭難届を出した際にも見つけてもらえる確率が高いです。逆に下ってしまうと沢や崖に行きつくことが多く、足を滑らせて滑落してしまう危険があります。戻るにも体力がなくなり、身動きが取れなくなってしまいます。
- 視界が悪い、天候が悪い時には、闇雲に動かず安全な場所にビバーク(待機)して、天候が回復してから動き出すようにしましょう。
私も何度か道迷いをしたことがあります(汗)。以下は「道迷いあるある」です。
道迷いは上りより下りで起きやすいです。下りは枝分かれが多いです。いろいろな登山口から登れる山は、ぼ~っと歩いているといつの間にか別のルートを下りていたりします。下った分を登り返すのって結構きついのですよ。最後まで気を抜かず、体力温存は必須です。
道迷いは高山より低山で起こりやすいです。低山は農作業道や獣道が多く、マイナーな山では道標も完備されていない場合があります。低い山だからといって安易に考えるのは危険です。
グループで歩いているからと言って油断はできません。おしゃべりに夢中になり、道迷いしても誰も気づかないことがあります。一人一人が緊張感をもって歩くことが大事です。
道に迷わないために知っておきたいこと
- 常に周囲に気を配り、目印になるようなもの(木・石・花・道標など)を記憶しておきましょう。時々後ろを振り返り、見える景色を記憶しておくと、ピストン時に役に立つことがあります。
- ルートを示すピンクテープは目印になりますが、低山では林業用にも使われています。見分けるのは難しいので、地図をよく見て歩き、踏み跡が薄くなったら登山道ではないと覚えておきましょう。
- 頻繁に地図を見て、現在位置を確認する癖を付けましょう。今自分がどこにいるかを知っておくことが何よりも大事!万が一、ロスト(道迷い)しても痛手が少なくて済みます。
- 登山アプリを使いましょう。ヤマレコ、YAMAPなどが便利です。あらかじめ登山ルートを設定しておくと、ルートを外れた際に警告音で間違いを知らせてくれます。
- スマホのGPSばかりに頼るのではなく、紙地図とコンパスも用意しましょう。電子機器に100%依存していると電池切れを起こした時に困ります。
- 迷ってしまっても慌てないことです。まずは深呼吸して落ち着きましょう。水分や行動食を補給して体力を回復させてから行動しましょう。
登山届を出そう
道迷いによる「行方不明」は絶対に避けたいところです。行方不明防止のためにも登山届を提出しましょう。登山届を出すことで、万が一遭難した際の迅速な救助活動にもつながります。
登山届は、主要な登山口に設置されています。手書きでポストに投函してもいいですが、最近ではオンラインによる提出も増えてきています。オンラインと手書きとの違いは、下山通知システムがあるかないかです。オンラインは自分で指定した家族や友人のアドレス等に下山通知を送信できるので、より安心感が高まります。
オンラインを使って登山届を出す方法
- アプリCompassEXー登山計画作成&登山届提出
- ヤマレコアプリ(プレミアムプラン:月額550円)でCompassへの登山届が可能
- YAMAPアプリから登山届をオンライン提出可能(協定締結自治体:長野県、群馬県警察、神奈川県【2022年4月19日現在】)
オンラインではありませんが、YAMAPでは自分で作成した登山計画をプリントアウトして、全国の登山届ポストに投函することが可能です。
山域によっては登山届を義務化している所もあります。北・南・中央アルプス、八ヶ岳、白山の活火山地区、谷川岳の危険区域などです。登山を開始する前に、自分が登る山が登山届を義務化しているかどうかを確認しましょう。
尚、岐阜県の同条例には罰則規定(5万円以下の過料)があります(北アルプス地区・御嶽山・焼岳では平成28年12月1日から、白山では平成30年12月1日から、乗鞍岳では令和3年12月1日からそれぞれ施行)。自分の安全、家族の安心のためにも、登山届の提出を励行しましょう。
まとめ
気持ちよく登山をするため、安全に登山をするためのルールやマナーを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?登山は自身の体力と向き合う屋外のスポーツですが、そこに大勢の人が集まれば自然と慣習が生まれてきます。みんなが楽しく安全に登山ができるよう、今一度自分の登山スタイルを確認してみましょう。
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