湿った沢沿いや山に生息し、春から秋にかけて人や動物に付着し吸血するヤマビル。知らないうちに咬まれ、気付いたら血だらけって経験をしたことはないですか?ここではヤマビルの生態、防御策、吸血された時の対処法についてまとめてみました。
ヤマビルの基本情報
皆さんはヤマビルを見たことがありますか?私は見たことがあります。8月の低山で数匹に襲われまして阿鼻叫喚!幸い咬まれる前に撃退しましたが、本当に気持ち悪かったです!できれば遭遇したくないヤマビルですが、山に登っている以上、いつかどこかで出会ってしまうかもしれませんよね。登山をするならヤマビルのこと、しっかり学習しておきましょう。

■ヤマビルってどんなところにいるの?
出没する山は限られていて、関東では丹沢が有名ですが、静岡でも安倍奥や大井川水系で確認されています。山梨の南部町や身延も多いです。ヤマビルは低山(800m以下)の沢に近い、ジメジメした場所、苔が多い場所に出没します。逆に北海道、青森では目撃情報はほぼないようです。
ヤマビルは登山道の脇の草むらや落ち葉の多い場所に潜んでいることが多いと言われますが、私が遭遇した時は、フツーに湿った登山道のド真ん中を這っていました。土の色と同化しているので、よ~く見ないと気付きません。
■ヤマビルってどんな生物なの?
ヤマビルのことをよく知らない方に、生態を簡単に説明したいと思います。
▶生態 環形動物(ミミズの仲間)ヒル類顎蛭目に属する。体長は約2~8cmで、自由に伸び縮みし、シャクトリムシのように移動する。色は茶褐色で3本の黒い縦筋がある。前吸盤の中央には逆Y字状をした筋肉質の3つの顎があり、細かい歯(顎歯)が並んでいる。この歯を使って皮膚を逆Y字型に傷つけて、ヒルジンと言う血液を固まらせない物質を出しながら吸血する。同時に痛みを感じさせないモルヒネのような物質を出すため、吸血されていても気がつかない。満腹になると自分から離れていく。噛まれた場所は暫く血が止まらない。
▶活動時期 気温25℃くらいから出没し始め、秋まで活動する(11月~4月は越冬)。特に雨の日や雨上がりには活発になる。
▶吸血対象 シカ、猪、カモシカなど。生息場所に人が近づくと吸血される。
▶寿命 2~3年
▶産卵 ヤマビルは雌雄同体。1回の吸血から産卵ふ化までは約2か月。1回の産卵卵のう数は1~5個。1卵のうから5~10の仔ビルが誕生する。血を吸ったヒルは速攻コロスべし!
■ヤマビルは増えている
近年、ヤマビルの被害は増加しています。その理由は、森林の荒廃、温暖化、野生動物の増加です。ヤマビルの宿主であるシカ、イノシシ、カモシカが増えて、生息範囲を広げることでヤマビルも増えていくのです。ヤマビルの吸血被害が増えた地域では、シカやイノシシなどの野生動物も増えています。
参考文献:ヤマビル研究会
ヤマビルに咬まれないための対策
ヤマビルはマダニや蚊のように感染症を運んだり、スズメバチのようにアナフィラキシーを起こしたりしませんので、むやみに怖がる必要はありません(ヤマビルを介した感染症事例は報告されていません)。とは言え、傷口から細菌類が入ることによる二次感染につながる可能性もあり、止まらない出血、かゆみが残ることもあります。積極的に防除していきましょう!
▶ヤマビルは足元からやってくる 吸血被害の多くは靴からの侵入です。ヤマビルは動物や人の吐く炭酸ガスや体温などで、その存在を知り移動します。移動速度は1分に1m程度とのこと。グループで歩く時は、2番目以降の人が被害に遭いやすいのです。。ズボンは靴下の中に入れる、サポートタイツと登山用の厚手靴下の併用などが効果的です。
▶服装 肌を露出しないこと。首回りやズボンと上着の隙間にも注意!手袋もしよう。
▶ザックは地面に置かない ザックをむやみに地面に置かないようにしましょう。ヤマビルがザックに取り付き、首や背中を咬まれることがあります。
近くに木があれば、ザックを吊るしておくのも一つの方法です。私はHERO CLIP(small)を使っています。カラビナなので普段はザックに付けておけます。耐荷重も22kgあり安心です。
▶忌避剤 ディートやイカリジン配合の虫よけスプレーが効きます。天使のスキンベープでイチコロでした。お手軽なシーブリーズもおススメ(地肌OK)。靴や靴下、肌に幅広く塗布します。
ヒル下がりのジョニーは、ディート無添加で、自然環境で生分解する成分のみを使用しているので環境にやさしく、長時間効きます(地肌はNG)。
塩や塩水も効果があるようです。ヤマビルに直接盛ったり、タオルに浸み込ませたり。正直めんどくさいので私は使っていません(^^;
▶まめにチェック! 10~30分おきくらいに足元をチェックしましょう。仲間同士で確認し合うのも忘れずに!
▶同じ場所に留まらない ヤマビルの生息区域では、のんびり歩いたり、立ち止まったりしていると被害に遭いやすいです。地面に膝や手を付くのもやめましょう。休憩は控え、足早に立ち去りましょう。
▶ヤマビルのいる山域に入らない そもそも論ですが、ヤマビルの被害に遭わないためには、ヤマビルがいる山を避けるのが最善の方法です。
■計画している山にヤマビルがいるかどうかを知る方法
- ヤマレコ、YAMAPなどの登山レポを確認する。夏シーズンに登山レポが少ない山は要注意!
- ヤマビル情報サイトを検索してみる。私はヤマビル研究会を参考にさせていただいています。全国から寄せられたヤマビル情報を閲覧できます。
ヤマビルに咬まれてしまったら?

運悪くヤマビルに咬まれてしまった時の対処法をお教えします。
1、すぐにヤマビルを取り除く
ヤマビルの吸盤を爪で剝がすようにしてすぐに取り除きます。マダニと違って傷跡が大きくなることはありません。気持ち悪くて触れない場合は、消毒用アルコール類(虫よけスプレー)を吹きかけると勝手に落ちます。
2、ヤマビルを殺す
血を吸ったヤマビルは卵を産んで繁殖してしまいますので、すぐに殺してしまいましょう。消毒用アルコール類をスプレーする、塩を盛る、ハサミで切る、ライターの火を近づけるなどして殺しましょう。踏んづけただけではヤマビルは死にません。
3、傷口の手当てをする
傷口を指でつまんでヒルの唾液成分(ヒルジンなどが含まれる)を搾り出すと炎症や痒みを減らすことができます。ポイズンリムーバーがあれば活用できます。
ヤマビルに咬まれた跡は出血しているので水で洗い流しましょう。抗ヒスタミン軟膏(ジフェンヒドラミン含有)を塗っておくと、痒みを抑えられます。(ムヒやウナコーワなどの虫刺され薬)
出血を抑えるため絆創膏を貼っておきます。通常のカットバンだと血を受け止めきれませんので、大きめの絆創膏がおススメです。2~3時間ごとに貼りかえるといいでしょう。
4、すぐにお風呂に入らない
一度出血が止まっても、お風呂に入るとまた出血することがあります。登山の場合、日帰り入浴が定番ですが、入浴する場合は気をつけましょう。
5、症状が長引くようなら医療機関を受診
ヤマビルに咬まれた場合、通常1週間~1ヶ月で症状はなくなりますが、治癒には個人差があり、数か月痒みや跡が残る場合があります。発疹や熱が収まらない場合は、皮膚科の医師に相談しましょう。
まとめ
ヤマビル対策には、とにかくヤマビルを足元から登らせないことが肝心です。そのためには、①靴や靴下の選定(登山の場合はミドルカットと厚手の靴下)、②忌避剤の塗布、③肌を露出しないことが必要不可欠です。忌避剤も広範囲にまんべんなく塗布しないとあまり効果がありません。
そして、万が一咬まれてしまった場合も、対処方法を事前に知り、ファーストエイド用品を準備していれば、あまり不安になることはありません。ヤマビル対策をしっかりしておくことで、より登山を楽しむことができるでしょう。
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